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プロダクト施工事例

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京都市京セラ美術館

京都市京セラ美術館

ガラス・リボン:鋼製枠は三次元の曲線を描いている

ガラス・リボン:平面的にはS字状の曲線を描いている

上:「ザ・トライアングル」のスチール枠は、ガラス・リボン枠とディテールは同じ
下:ガラスロビー枠は目立たないようにすっきりしている

●三次元曲線を描く「ガラス・リボン」

京都の文化・交流ゾーン、鴨川と東山の山並に挟まれた岡崎地区に2020年5月に開館した「京都市京セラ美術館」の建具工事にKIKUKAWAは参画しました。
本プロジェクトは、国内最古(1933年竣工)の公立美術館「京都市美術館」を保存再生する改修工事。正面ファサードの意匠保存のため、アプローチのランドスケープをスロープ状に掘り下げることで、正面地下にメインエントランスを増築しています。「ガラス・リボン」と呼ぶ新たな空間は、平面的にはリボン状に、断面的には緩やかなお椀型に曲線を描いた三次元形状。その三次元状の鋼製ガラス枠を中心に、KIKUAWAは技術力を発揮しました。

●三次元状のサッシ枠を鋼製形鋼で構成

前述のように三次元状のサッシ枠となるため、三次元製品の実績が多いKIKUKAWAにお声がかかりました。
保存される上部のエントランスと共に、新たな顔となる「ガラス・リボン」。それだけに、全体的な形状だけでなく、細部にわたる様々なご要望がありました。枠ディテールは、すっきりとしたシャープさを表出する9㎜厚の形鋼サッシで統一。加工難度もさることながら、全て形鋼で構成すると非常に重たくなってしまうため、化粧材以外は鋼板で構成するなど、軽くなるように工夫しています。

●スチール平板による「ガラス・リボン」枠

京都市京セラ美術館

【内部側には結露受けパネルがある】

全長160mほどの「ガラス・リボン」枠は、スチール9㎜の平板(FB)で構成。見附60㎜の上枠は、6㎜のFB水切を備えています。下枠の外部側の見附は150㎜。内部側には、結露受けパネル(1.6㎜・W180㎜×H130㎜)を備え、京都の土地柄、特に冬は結露がひどくなるため、ガラスから落ちた水滴をパネルに受けた後に排水できる納まりとしています。
両端部は、上枠と下枠が合流するようなディテール。最終的に1枚ものの異形パネルで納めています。
中央の2箇所の出入口には、それぞれ自動片引き框扉と片開き框扉を設置。自動ドアは、W2.1m×H2.2mと非常に大型の扉枠を納めました。

●ショーケースと景観を演出するガラスを支えるスチール枠

「ガラス・リボン」枠以外にも、北西エントランスの「ザ・トライアングル」枠や、東側のガラスロビー枠にも携わっています。
新進作家のショーケースとして使われる三角形の建屋である「ザ・トライアングル」枠の基本ディテールは、「ガラス・リボン」枠と同等品。鋭角部を伴う3箇所のコーナーを含めた全周50mにわたって囲っています。
ガラスロビー枠は、余り目立たないような納まりです。上枠の見え掛りは、9㎜のコバ(厚み)部のみ。下枠の見え掛り巾木は20㎜となっています。ガラスの開放感を押し出した設計は、既存のまま残した日本庭園の景観を楽しむことができます。

●三次曲線と重量物に対する建具工事の管理ポイント

鋼製ガラス枠は、基準4.5m前後で割付。「ガラス・リボン」枠のように滑らかな三次曲線を描くためには、ガラス枠単品の精度も重要ですが、部材同士の接続状態もより重要となります。図面通りの精度を守る製作に加え、部材同士を工場仮組して確認することで、品質を担保しました。
型鋼で構成する枠と一部の框扉、250㎏にもなるW2.1m×H2.2mの自動扉など、重量的な問題は、設計段階から事前に検討や計画をしています。特に、自動ドア装置メーカーとは細かい調整をしました。また、広大な場所ということもあり、横移動も工夫のいるところでした。

●歴史的建築物の保存と活用に貢献

2020年7月、京都市美術館本館は登録有形文化財へ登録されました。保存及び活用についての措置が特に必要とされる文化財建築物を、文部科学大臣が文化財登録原簿に登録する制度です。
加えて、「京都市京セラ美術館」は、下記2つの賞を受賞。「ガラス・リボン」枠をはじめ、保存再生のプロジェクトに貢献できたことを、KIKUKAWAは光栄に思っております。

◆2020年度  JIA日本建築大賞
受賞理由:歴史的価値の高い建築物の保存再生のアプローチ方法を高く評価。
※日本建築大賞は、公益財団法人日本建築家協会(JIA)の主催で、建築文化の創造と発展に貢献する建築デザインを表彰する「優秀建築選」の入賞作品の中、最優秀作品を顕彰する賞です。
詳細は下記をご参照ください。
http://www.jia.or.jp/member/award/kenchikusen/2020/index.html

◆第30回(2020年度) AACA賞
受賞理由:多くの来館者に親しまれた美術館の姿を後世に伝えるための保存と活用に力点を置いた増改築を慎重に進めつつ、大胆な機能を付加した手法を高く評価。
※AACA賞は、一般社団法人 日本建築美術工芸協会(AACA)の主催で、建築、美術、工芸、ランドスケープなど様々な分野が協力し、融合して創造された文化的環境と美しい芸術的景観を対象とする最優秀作品を顕彰する協会賞です。
詳細は下記をご参照ください。
http://www.aacajp.com/prize/aaca/

品名・施工個所 材質 仕上げ・加工
メインエントランス
ガラス・リボン枠
スチール(形鋼) 三次元状ガラス枠
大型自動框扉枠
※仕上は現場塗装で別途
ザ・トライアングル
ガラス枠
スチール(形鋼) ※仕上は現場塗装で別途
東エントランスロビー
ガラス枠
スチール(形鋼) ※仕上は現場塗装で別途
建物名称京都市京セラ美術館
施主京都市
設計基本設計:青木淳・西澤徹夫設計共同体
実施設計:松村組・昭和設計
施工株式会社 松村組
竣工2019年
建設地京都府京都市左京区