●ガラスから外観を維持したアルミパネルへの天井耐震改修工事

1971年竣工の「ポーラ五反田ビル」は、コア間に渡された38mの鉄骨大梁による支持により無柱のオフィス空間を実現した、ダブルコアシステムのプロトタイプ。その無柱空間である1F「クリスタルロビー」の天井耐震改修工事（2015年）に、KIKUKAWAは携わりました。
天井を従来の合わせガラスからアルミパネルとすることで重量を半減し、下地にはブレースなどを設けて災害時の安全性を確保。また、特殊な塗装技術により当初の外観を維持することで、価値を保持し安全性を担保するという コンセプトを実現しています。

●映像に乱れのないピアノブラック塗装を施したアルミカットパネル

グレーペンガラスと磨き板ガラスの合わせガラスで構成していた「クリスタルロビー」天井は、アルミパネルへと改修するにあたり、表面仕上げに光沢のあるピアノブラック塗装を採用。通常のウレタン樹脂塗装に対して、3～5倍の膜厚で塗装し、特殊な技術で磨きあげました。その表面はガラスと遜色はなく、映り込む映像に乱れのない平滑度を保ち、当時の意匠を踏襲しています。
天井パネルは、4㎜のアルミカットパネルを採用。通常であれば、4㎜のアルミ板の採用は、スタッド痕対策としては十分ですが、鏡面と変わらない仕上げのため、わずかな痕でも気になってしまいます。その対策として、フレームとの締結部の工夫と、何度も検証した最適なトルク値を導き出すことで、管理方法を確立し対応しました。

※ピアノブラックを始め特殊塗装は下記のアルミ及びスチールから確認できます。
KIKUKAWAの金属仕上ライアップ

●既存を活かした精緻な図面納まりを考案

当初の外観を維持するため、既存のガラスを保持していた幅55㎜のステンレス枠もデザインとして残しています。基準W1145㎜×L1743～1910㎜の天井パネルを囲う額縁は、HL仕上げの2㎜のステンレス板。4㎜のアルミパネルと2㎜のSUS額縁目地は、5㎜の目地を挟んで、化粧面のツラを揃える難易度の高いディテールです。
640㎡ある天井パネルのうち、内部の340㎡分は既存のガラス枠をそのまま利用しています。そのため、既存枠を外さずに、精密なパネル取付を可能とする方法を考案し、実際に何度も検証することで、最終的な納まりを決定しました。

●安全性と意匠性を担保した天井パネル工事を既存下地利用により実施

事業の継続が前提のため、既存下地を利用しながらの改修工事。大地震時においても利用者に危害が及ばないよう、必要に応じて新設の補強下地を追加し、万が一のためのパネル落下防止措置も施してあります。
既存下地の確認は勿論のこと、精度の良い製品を納めるためにも現場確認は必要不可欠です。特に内部パネルは既存枠に合わせるため、192枚全てのパネル分の現場実測を実施しました。

●要望を実現することで2つの賞の受賞に貢献

本プロジェクトの天井パネル工事において、お客様の要望にKIKUKAWAは応えることができましたが、特に仕上に関しては高評価をいただくことができました。そのことは、「ポーラ五反田ビル・クリスタルロビー」が下記2つの賞を受賞したことに貢献できたものと考えています。

◆2017年度JIA 25年賞・JIA 25年建築
受賞理由： 1971年の竣工当時から空間構成や緑と光に満ちたロビーなど極めて強い印象を与えた建物が、東日本大震災後のいくつかの改修工事の後も、原デザインを敬い保持しようという強い意欲のもと、現在も元のままの見え方が維持されて使われている。
※JIA 25年賞・JIA 25年建築は、公益財団法人日本建築家協会の主催で、25年以上の長きにわたり、建築の存在価値を発揮し、美しく維持され、地域社会に貢献してきた建築を登録・顕彰する賞。
詳細は下記をご参照ください。
http://www.jia.or.jp/member/award/25years/2017/pola.htm

◆2018年度グッドデザイン賞
分類：産業のための建築・空間・サインシステム
受賞理由：現代の安全基準に適合した建物へと継承するプロジェクトにおいて、既存のデザインのリニューアルが目指すべきデザインの質を示した。
※グッドデザイン賞は、公益財団法人日本デザイン振興会の主催で、毎年デザインが優れた物事に贈られる賞。人が何らかの理想や目的を果たすために築いたものごとをデザインととらえ、建築もその対象に選ばれます。
詳細は下記をご参照ください。
https://www.g-mark.org/award/describe/47971