
七宝文様のスチールパネルユニットで覆われる8号館
上段:エントランスホール螺旋階段:三次元形状のせり上がりが美しく納められている
下段:ライブラリーエリア階段室:コーナーのR加工部も含め3㎜の細目地で納められている
上段:螺旋階段のライトアップ:光陰のコントラストが荘厳さを演出
下段:七宝文様がライトアップされることで建物はあんどんのような姿に代わりキャンパスを優しく照らしている
●デザインモチーフである七宝文様を金属パネルにて形成
東京・西巣鴨の地、約100年の伝統を紡ぐ仏教系大学である「大正大学」。そのシンボルであった礼拝(らいはい)堂を建替え、ラーニングコモンズ・図書館・礼拝ホールを備えた総合学修支援施設として誕生した 「新8号館」の金属工事にKIKUKAWAは参画しました。
空間に一体感を与えるデザインモチーフは、仏教に由来する『七宝文様*』。パンチングパネルをずらしながら2枚重ねにし重量感のあるパネルユニットとすることで七宝柄を形成しました。七宝パネルは、外部・内部といたるところに納められ、「大正大学」の新しいランドマークとしての佇まいを引き立てています。
*七宝文様:同じ大きさの円または楕円を四分の一ずつ重ねる文様。七宝とは仏教の経典に出てくる七種の宝のことで、金・銀・瑠璃・玻璃 (はり)・しゃこ・珊瑚・瑪瑙 (めのう) のことと言われています。
●実寸大モックアップによる仕様決定
七宝文様の内外装パネルの技術相談を頂いてから工事完了まで2年半、曲面部も含め試行錯誤に工夫を重ね、技術力を発揮することで対応した本プロジェクト。ディテールを含めた仕様決定を試作や実寸大モックアップにて詰めていきました。パネルを2枚重ねる関係上、精密さを要求されるため、問題点の洗い出しと改善を完了した上で量産体制に入りました。
また、七宝文様はライトアップされた演出が大きな特徴の1つとなることから、色味だけでなく照明との兼ね合いが重要な要素となります。7色の粉体塗装サンプルを製作し、各仕上の反射率も考慮して仕上げを決定。同様にモックアップにてお客様にご確認いただくと共に綿密に打合せしながら進めていきました。それでも取付時は、照明点灯時に0.5㎜単位での陰影調整を行い非常に苦労しています。
●内外装スチール七宝パネル

【4F本の小径の様子】
「新8号館」を囲う約1600㎡の外装七宝パネルは、スチール(高耐食性めっき鋼板)1.6㎜のパンチングパネルを2枚重ねた上に裏板を加えた3枚構成のユニットパネル。基準W600㎜×H2400㎜のパネルをゴールド系のポリエステル粉体塗装で仕上げ、φ100㎜、ピッチ120㎜のパンチングを縦横1/4ずつずらして重ねることで、七宝文様を形成しています。ユニットパネルの剛性を計算した下地設計により効率化を図り、3㎜の細目地納まりにも無理なく対応することができました。
また内装パネルとして、同様な納まりで、4F本の小径に110㎡、2Fラーニングコモンズの吹抜け幕板に191㎡ほど七宝パネルが採用されています。
●七宝パネルを三次元でも
内部階段、ライブラリーエリアを1Fから4Fまで繋ぐ階段室の壁パネルと、エントランスホールから螺旋で伸びていく階段パネルも、七宝文様のスチールパネルで納めています。どちらも曲線部が存在し、特に螺旋階段は三次元となることから、特に難しいものでした。その中でも、外装パネル同様の意匠精度や細目地3㎜納めのご要望に対し、様々な工夫やノウハウを駆使することで対応しています。
曲線の場合は溶接加工が必須ですが、薄板パネルかつ仕上げ光沢が高いため、溶接歪みが品質に直結する厳しい条件のなか、パネル歪みを極力抑えるための溶接の位置・順番・程度などを細かく調整しながら製作しています。
螺旋階段の施工前は、鉄骨階段ササラを詳細に実測しブラケット位置などを製作に反映。施工時には、取付職人が3Dデータを扱えるようにし、放射Rポイントとの誤差を丁寧に調整することで綺麗な螺旋を描くことができました。
●機能性も追求した階段七宝パネル
36mの螺旋階段の七宝パネルは、手摺支柱を内蔵し、内側と外側のパネル2枚にて七宝文様を形成。基準W600㎜×H2400㎜、直線部以外は全て形状の違うパネルユニット60セットで構成しています。下部には照明ラインも内蔵し、ライトアップ時の光と影は荘厳さを醸し出しています。
踊場のコーナー部が曲面加工品となっている約200㎡の階段室の七宝パネルは、基準W720㎜×H2400㎜のユニットで構成。他と違い横目地も存在しますが、取付後の音鳴り防止を講じた下地システムにて、同じく3㎜の細目地で納めています。こちらはユニットパネルの裏に照明設備がありますが、2枚重ねのため七宝パネルの開口のみではメンテナンスができません。そこで、奥側のパンチングパネルのみを取り外せる納まりとし、点検口がある事がほとんどわからないような意匠としました。
●今後に繋がる重要なプロジェクト
「大正大学8号館」において、お客様からは七宝パネルの品質及び設計から施工までの対応力に対して満足の声を頂くことができました。パネル目地3㎜など攻めた納まりを実現できたこと、とりわけ螺旋階段の3次元曲面の七宝パネルに対しては、特に高く評価して頂いています。
七宝パネルのようなデザインパネルユニットが内外装にわたり覆う迫力ある本プロジェクト。質・量ともKIKUKAWAにとって挑戦であり、技術力を高める重要な事例の1つとなりました。
品名・施工個所 | 材質 | 仕上げ・加工 |
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外装他 七宝パネル |
スチール (高耐食性めっき鋼板) |
ポリエステル粉体塗装 (メタリック) デザインパンチングユニット |
エントランスホール螺旋階段 手摺壁七宝パネル |
スチール (高耐食性めっき鋼板) |
ポリエステル粉体塗装 (メタリック) デザインパンチングユニット 三次元加工 |
ライブラリーエリア階段室 壁七宝パネル |
スチール (高耐食性めっき鋼板) |
ポリエステル粉体塗装 (メタリック) デザインパンチングユニット |
建物名称 | 大正大学8号館 |
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施主 | 学校法人 大正大学 |
設計 | 株式会社 大林組 |
施工 | 株式会社 大林組 |
竣工 | 2020年 |
建設地 | 東京都豊島区 |