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プロダクト施工事例

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AIRSIDE「Kai Tak Turn」

アルミ合金製ベンチ「Kai Tak Turn」

アルミ合金で製作したベンチ「Kai Tak Turn」

曲面を形作る金属加工技術で、動きのある独特なフォルムを実現

溝を彫るミーリング加工でパネル表面の模様を描く

●複合施設のアルミ合金製ベンチを製作する海外プロジェクト

香港の旧啓徳空港跡地に誕生した、ショッピングモールやオフィスの入る大型複合施設「AIRSIDE」。施設内にはいくつかの彫刻作品が設置されており、KIKUKAWAはそのうちの1つ、「Kai Tak Turn」の製作に携わりました。デザイナーユニット miriamandtom によりデザインされた、アルミ合金製のベンチです。

―コンセプトは「Fabric(ファブリック)」と「Flight(フライト)」の融合。「Fabric」は(「AIRSIDE」の開発会社である)Nan Fungグループの繊維貿易業の歴史を、「Flight」はこの地の空港としての歴史を意味しています。miriamandtom Webサイトより)

●曲面形状を実現する下地構造と曲げ加工

作品の大きさは、およそ縦1.2m×横4.4m×高さ1m。22枚のアルミ合金パネルを溶接でつなぎ合わせて一体化しています。左右両端は宙に浮いていて、中央の接地部で支える構造です。また、座面は緩やかにめくれ上がるような曲面を描いています。

―その形状とアルミニウム構造は航空機の翼を参考にしており、その表面の流動性は風になびく布地の動きを参考にしています。(同)

旧啓徳空港といえば、ビル群上空を低空飛行しながら機体を急旋回させて着陸する、通称「香港アプローチ」が有名で、そのイメージを表現した形となっています。
この形状と強度を実現するため、内部の骨組みをどのような構造にするかは検討を重ねました。最終的に、ベンチの曲面形状に沿った格子状の骨組みを採用することで、化粧パネルの位置出しや固定をスムーズにしています。
座面の曲面はロール曲げ加工で成形。少しずつ微調整しながら理想の形状に近づけていく職人技で加工しました。また、パネルのジョイント部は、細く深い溶接が可能なファイバーレーザー溶接を活用することで、模様加工の面積をできるだけ広く取れるようにしています。

ファイバーレーザー溶接について、詳しくはこちら

●模様を描き出すミーリング加工

材質は、板厚4㎜のアルミニウム合金(A5052)を使用。耐食性と強度に優れ、切削加工の材料にもよく使われます。様々な表面仕上げをご提案した中で、パネルを削り出して模様を描くミーリング加工のご採用が決まりました。
模様は上空から見た雲の形をもとにしており、パネル表面に刻まれた長さ3~30㎜・深さ1~2㎜の溝で表しています。溝の長さや深さを変えて密度を変化させることで、衛星画像で見るような雲の濃淡を表現しました。遠くから見るのと近くから見るのとで、また違った表情を見せてくれる魅力的なデザインです。
今回のミーリング加工は、表面仕上げとしては初めての挑戦だったため、加工方法を確立するのに多くの試行錯誤が必要でした。機械の使い方を細かいところまで研究し、0.1㎜単位で検証を重ねることで、化粧仕上げとして製品化にこぎつけました。
ミーリング加工の後は、ブラスト加工を経て、PHL(バイブレーション)でパネル表面を手作業で仕上げています。職人の絶妙な力加減によって、ほどよく研磨目がきらめく美しい仕上がりとなりました。

アルミ合金製ベンチ「Kai Tak Turn」

▲表面仕上げ拡大。細かい技術が凝縮されている。

●金属加工技術力とモノづくりの精神を体現

ミーリングやファイバーレーザー溶接といったデジタル加工技術による機械加工と、曲げや研磨といった職人の手仕事による伝統的な加工。金属加工にはどちらも欠かせない技術です。本プロジェクトは、その2つが上手く融合して完成しました。日本の繊細な金属加工技術と、試行錯誤を繰り返してより良いものを生み出すモノづくりの精神を、こうして海外に納める製品で体現できたことは、当社としても大変誇りに思います。

品名・施工個所 材質 仕上げ・加工
ベンチ
「Kai Tak Turn」
アルミ合金 ファイバーレーザー溶接
ミーリング加工
ブラスト加工 PHL
建物名称AIRSIDE「Kai Tak Turn」
施主Nan Fung Group
設計デザイン:miriamandtom
設計・エンジニアリングコンサルタント:VIA/FRONT
竣工2023年
建設地香港