
東京ミッドタウン八重洲に設置されたステンレスミラーのアート作品「STAR」
球面に2000本以上のロッドを取り付け、一つ星の輝きを表現する形状を実現
夜は街灯やネオンの光を反射し、昼間とはまた違った煌びやかな表情を見せる
●光の反射が美しい、唯一無二のステンレスアート
JR東京駅と直結し、商業施設やオフィス、ホテルや小学校など多様な施設が集まる大規模複合ビル「東京ミッドタウン八重洲」。KIKUKAWAは、エントランスに設置されたステンレス製のパブリックアート作品「STAR」の製作プロジェクトに参画しました。
高さ9.5m、直径6.4mのこの巨大な”光の彫刻”は、デザイナー・吉岡徳仁氏による作品。未来への希望の光を表しており、世界が一つになるようにという平和への願いが込められています。360度全方位に配置された2000本以上のステンレスミラーのロッドが、太陽光や夜景の光を反射して多様な輝きを放ちます。時間帯により変化する街の景色を映し出す、八重洲の新たなシンボルが誕生しました。
●ゆがみを抑えた鏡面ステンレス溶接
鏡面ステンレスのロッドは、本プロジェクトのために特注した、幅35~70㎜の八角柱もしくは六角柱の引抜材を使用。先端は鏡面ステンレス材を溶接してフタをしています。結晶のようなランダムな形状を実現するため、210~4150㎜と長さの異なるロッド27本を1ユニットとし、8種類・計79ものユニットを製作しました。
「鏡面のゆがみを極力なくしたい」というお客様のご要望にお応えするため、ロッド同士の溶接には熱による変形を小さく抑えられるファイバーレーザー溶接を主に活用。溶接の順番や向きなどにも注意を払い、試行錯誤をしながら最適な加工方法を確立させていきました。
●取付精度の高さにつながる三次元設計技術
アート作品を支えるのは、直径280㎜のステンレス丸パイプの支柱と、その上に乗る直径約1mの鏡面ステンレスの球体。この球面に、総重量5tにもなるロッドのユニットが取り付いています。立体的で複雑な形状となるため、3D-CADでの設計はもちろん、3Dプリンターで模型を製作して社内での検討やお客様との打合せに活用しました。
ロッドを球面に取り付けるための土台パーツの溶接は、少しでも位置や角度がずれてしまうとロッドが正しい向きで取り付かなくなってしまいます。そのため特に正確さが求められましたが、三次元で考えなければならない球面上での位置出しは至難の業でした。そこで、3D設計データをもとに、球面に沿って被せることで位置が決まる専用の立体ゲージを開発。設計と製造で知恵を出し合って課題を克服しました。このような三次元設計・加工技術が、その後の高い施工精度にも繋がっています。
●意匠実現の鍵を握る施工方法の検討
一見するとどのような納まりなのか分からないほど、ステンレスロッドが密集した構造の今回のモニュメント。施工方法が本プロジェクト実現の1つの鍵だったため、計画当初から検討を重ねました。土台となる支柱部分を立て、現場でロッドのユニットを球の上部から順にボルト固定で取り付けていきます。特に取付順については注意深く検証し、設計時に3D図面上で1つ1つ取付可能か確かめながら順番を決定しました。ロッドが集中する狭い空間での施工作業は、VRを活用した事前シミュレーションも行っています。
ボルト固定用の金具は、長尺かつ重量のあるロッドを安定して固定できる特注仕様の座金を考案。意匠だけでなく、安全性にも配慮した納まりとしました。
●技術力が結晶したステンレスモニュメント
高品質の鏡面ステンレス溶接技術と、三次元の高精度な施工技術が求められた今回のモニュメント。デザイナーの意匠やこだわりを細部まで再現するため、試作やシミュレーションを何度も重ね、完成に至りました。計画の初期から、施工段階まで見通して総合的に製作方法を検討できるのは、設計から施工までの一貫対応体制を整えたKIKUKAWAだからこその強みと自負しています。まさに当社の金属加工の技術力が結晶した、美しい芸術作品となりました。
品名・施工個所 | 材質 | 仕上げ・加工 |
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パブリックアート作品 「STAR」 |
ステンレス | 鏡面仕上げ |
建物名称 | 東京ミッドタウン八重洲「STAR」 |
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施主 | 三井不動産株式会社 |
設計 | 吉岡徳仁デザイン事務所 株式会社竹中工務店 |
施工 | 株式会社竹中工務店 |
竣工 | 2023年 |
建設地 | 東京都中央区 |