●世界初の「カラーステンレス」採用事例

東京タワーにほど近い麻布台の住宅街の真ん中に、圧倒的な存在感を放つ「霊友会釈迦殿」。1975年竣工の巨大な宗教建築物のステンレス工事にKIKUKAWAは参画しました。
表面仕上げは、本格的かつ大量に採用された例としては、日本だけでなく世界初の「カラーステンレス」。KIKUKAWAの「何にでも挑戦する」という姿勢と「Never Say No」という精神を体現したプロジェクトです。

●カラーステンレス（SUS発色）とは

カラーステンレス（SUS発色）とは、ステンレスの表面に透明な酸化被膜を100～300nmの厚さで生成。厚みを調整した被膜への光の干渉現象により、ブラック・ゴールド・ブロンズ色などの様々な色彩を発色する技術です。透明な被膜であるため、HL・PHL・鏡面仕上げなどの特徴を活かせるカラーステンレスは、組み合わせにより異なる表情を演出する意匠性の高さから、現在では建築建材に多く使用されています。

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●初めてカラーステンレス製品を製作するにあたって

初めて「霊友会釈迦殿」でカラーステンレスを採用するにあたっては、性能試験や色調管理などに、多くの知恵と労力がかかりました。採用が決定される前は、暴露試験などの耐侯性・耐食性を調査し外部使用可であることの確認や、曲げなどの機械加工による被膜の追随性の確認などをすることで、メーカーと共に性能の把握をしてます。採用後は、クライアントのイメージを追求するために多くのサンプルを製作しました。色調管理の基準や取り扱いマニュアルが存在しないなか、材料調達においてはロットを徹底して管理。実施段階では、設計・製造・施工のそれぞれの工程で試行錯誤を繰り返すことで最善の方法を選択しています。

●大型成形プレス加工で対応

カラーステンレスが使用された内外装パネルは、約26,000㎡。主に大屋根・正面入口天井・大ホール天井で使用され、大板を成形プレス加工することで対応しています。カラーステンレスが絞り加工に適していたこと、物量が多かったことから選択された大型成形プレス加工も、当時としては例のない画期的なものでした。
一体成形することで、一枚一枚が芸術作品のような印象を与える複雑な形状のパネル品質を確保するとともに、数量の多さに対する納期も現場の要望通りに管理することができました。

●重厚感のあるブラック発色

大屋根パネルは、1.2㎜の2B材にブラック発色を施すことで、落ち着いた重厚感のあるものとなっています。成形プレス型は、総重量58tonの4組からなっており、最大W750×L3350が成形できる大型なもので、1500tonの加圧力を加えて成形します。大きいパネルから小さいパネルへ型を修正しながら成形し、それ以外の役物や破風屋根のR部分なども独自の工夫がなされています。
破風ボーダーは3.0㎜のHL材にブラック発色を施しています。断面形状が複雑でありながら流麗な曲線で納めるためには溶接で組み上げる必要がありました。発色を考慮した溶接をするため、ここにも様々な工夫をしています。

●古代金色に輝く雲海

大ホールの天井パネルは、古代金色に輝く雲海をテーマに水平に積層されて上昇する層を示し、一大宇宙を象徴。0.6㎜の2B材に特殊な前処理をしてゴールド発色をすることで、古代金色の重厚なイメージを表現しています。成形プレス型は800tonのプレス加圧力のある2組からなり、雲海のイメージパターンを成形しています。
施工にあたっては、積層されたものとするために斜めに取付られており、工場にてユニット化したパネルを精度よく効率的に取付ける為に、下地を工夫することで対応しました。

●建材としての「カラーステンレス」への貢献

「霊友会釈迦殿」のカラーステンレスパネル工事を実現させたことは、KIKUKAWAのカラーステンレス工事の技術力を一気に押し上げノウハウを蓄積することになりました。それと共に、カラーステンレスが現在に渡って広く建材として採用されることに貢献することになりました。