オークラ プレステージタワー 5Fエントランスホール:
HL+極淡色硫化イブシを施した独立壁(左手)
褐色の絨毯と石床の取合の真鍮製床目地棒もKIKUKAWA製(右手)
オークラ ヘリテージウイング 5Fエントランスホールの『三十六人家集』料紙装飾壁
既存枠を包むブロンズ枠を製作している
オークラ ヘリテージウイング 4Fエントランスホールの羊歯屏風
ブロンズ製の四方枠と装飾ボードを受けるスチール製のハニカムパネルを施工している
●硫化イブシ仕上げの伝統美と金属工事の技術力にてコンセプトに貢献
日本を代表するラグジュアリーホテル「ホテルオークラ東京 本館」を建替え、2019年9月に開業した「The Okura Tokyo」。日本の美と心を継承した17階建ての「オークラ ヘリテージウイング」と、世界都市・東京を体現した躍動感あふれる41階建ての「オークラ プレステージタワー」の両棟ともに、KIKUKAWAは主にブロンズ工事にて参画しました。
日本の伝統美を継承し、設備・機能を刷新する「伝統と革新」をコンセプトとする本プロジェクト。伝統美の継承には硫化イブシ仕上げのノウハウにて、機能の刷新には金属工事の技術力にて、KIKUKAWAは貢献することができました。
●こだわりのHL+硫化イブシのブロンズパネル
谷口建築設計研究所より、「オークラ プレステージタワー」のエントランスホールに計画した独立壁のご相談を頂いたことにより、本プロジェクトに携わることになりました。
“金屏風”を意識した壁パネルの材質が決まる過程でも、多種多様なサンプルを提出。デザイナーのイメージを実現するため、仕上げに関しても何度も見本製作にトライしました。
それら多くのサンプルやモックアップを、取り合う他材との比較やライトアップなどにて総合的に検討。最終的に、材質は真鍮(黄銅)、仕上げはHL+極淡の硫化イブシが採用されました。
管理の難しい硫化イブシ仕上げに均一性を求められたブロンズパネルは、目地などの細かいディテールまで精度を要求されています。仕上げの明度の細かい要望や、確定後の他材との実物モックアップを並べて全体的な意匠を検証するなど、進捗に合わせた工場製品検査に谷口吉生先生が約1年の間に3回ほどご来場され確認されるほどでした。
KIKUKAWAのテクノロジー – 硫化イブシ仕上げはこちら
●真鍮のゴールド色を活かした極淡色の硫化イブシ
80㎡の独立壁は、化粧面が真鍮板2㎜のハニカムパネル。基準W1200㎜角の正方形パネルの目地は、極小の0.5㎜となっています。そのため、取付納まりにも工夫をこらし、裏からの固定や引掛け工法を駆使しています。
素地のゴールド色を活かした極淡色の硫化イブシは、HL研磨から硫化の工程にシビアな管理条件が必要で、統一感のある色調管理も含め、仕上げに関しては大いに苦労しました。工程上での細心の品質管理とは別に、出荷前に工場にて全パネルを意匠通りに並べ、色合わせ検査を実施し万全を期しています。
また、施工においても、目地などシビアな条件のなか、職人技とノウハウを駆使し図面通りに納めることができました。
●アートを引き立てるブロンズ製品
日本の美の粋を集めた「オークラ ヘリテージウイング」では、同じく谷口建築設計研究所が設計を担当されたアートワークと組み合わせたブロンズ製品を納めています。
1つは、本館の大宴会場「平安の間」にあったオークラを象徴する『三十六人家集』*料紙(和紙)を、5Fエントランスホールの壁面へと移設する工事。全体で3m×31m、8枚の料紙の既存枠ごとを包む形でブロンズ枠及び目地部を、15㎜の見附寸法で納めました。その裏側の下部にはスポットライトと取り合ったアルミルーバーを設置しています。
2つめは、4Fエントランスホールに自立している、W5.8m×H2mの羊歯(しだ)屏風。そのブロンズ製の四方枠(上枠・竪枠=4㎜フラットバー、巾木=2㎜曲げ加工品)と羊歯文様**を描いたボードを受けるスチール製のハニカムパネルを施工しています。
*三十六人家集:京都市・西本願寺が所蔵する柿本人麻呂、紀貫之ら著名な三十六歌仙の和歌を集めた平安時代末期の装飾写本。三十六人家集のまとまった写本としては最古のもので、国宝に指定されている。本プロジェクトの装飾壁は、同家集の料紙の構図や文様、技法、材料をもとに制作されたもの。
**羊歯文様:植物のシダをモチーフにした模様。羊歯は古来より繁栄や長寿を意味する植物とされ、文様としての歴史も古い。平安時代の頃からモチーフとなり、武具や家紋でも意匠化されていた。
●最高品質の要求に応えるKIKUKAWAの対応
ブロンズ製品以外にも、高品質の金属製品を納めています。
例えば、「オークラ プレステージタワー」の低層屋上部に設置された、高耐食フェライト系ステンレス鋼(SUS443J1)を用いた煙突及びEV出入り口の外装パネル(設計担当:大成建設一級建築士事務所)は、KIKUKAWA独自の引掛け工法にて3㎜目地で構成。そこに、ランダムに取り付けた各々幅の違うフラットバーのリブや角パイプのルーバーを組み合わせた意匠性の高いものとなっています。
1年を超える設計打ち合わせの中でのデザイン変更や、様々な場面での仕上やディテールに関する細かい要望、かつ最高品質の製品を納めることを求められました。KIKUKAWAはそれらに対しお応えすることで、お客様からの信頼を得ることができました。特に、羊歯屏風は綺麗に格好よく付いているとのお言葉を頂いています。
品名・施工個所 | 材質 | 仕上げ・加工 |
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オークラ プレステージタワー 5Fエントランスホール 独立壁ハニカムパネル |
ブロンズ(真鍮) | HL+硫化イブシ |
オークラ ヘリテージウイング 5Fエントランスホール 『三十六人家集』料紙装飾壁枠 |
ブロンズ(真鍮) | HL+硫化イブシ |
オークラ ヘリテージウイング 4Fエントランスホール 羊歯屏風枠 |
ブロンズ(真鍮) | HL+硫化イブシ |
建物名称 | The Okura Tokyo |
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施主 | 株式会社 ホテルオークラ |
設計 | 虎ノ門2-10計画設計共同体(大成建設一級建築士事務所・谷口建築設計研究所・観光企画設計社・日本設計・森村設計・NTTファシリティーズ) |
施工 | 大成建設 株式会社 |
竣工 | 2019年 |
建設地 | 東京都港区 |