牛ヶ淵側からのチタンパネルで覆われた「昭和館」
高い精度のチタンパネルで縦横のラインを強調している
6mの山型チタンパネルは11箇所の曲げ加工を施している
●チタンパネルで覆われたモニュメント性を持った建築物
日本武道館や様々な美術館・博物館を有する北の丸公園、牛ヶ淵ほとりの九段下に建てられた特徴的な印象の「昭和館」のチタン外装パネル工事に、KIKUKAWAは携わりました。
「昭和館」は、戦没者遺族の援護施設の一環として、戦中・戦後の生活に関する資料を展示し、後世代にその労苦を知る機会を提供する博物館。資料を守るため、外部の影響を遮るよう窓がほとんど無い外観は、耐久性のあるチタン外装で覆っています。敷地の制約条件のもと、有機的な空間となるよう考えられた柔らかな曲面で構成される外観ラインもあり、モニュメント性を持った建築物となっています。
●耐久保存建築としてチタン外装パネルを採用
「昭和館」は、平和追求へのメッセージを後世に伝える耐久保存建築のプロトタイプとして、メンテナンスフリーの材料を採用するというコンセプトのもと、チタンパネルを採用。チタン材は、表面の安定的な酸化被膜により、優れた耐候・耐食性を発揮し、溶接や研磨、加工などによる劣化もない金属です。
また、「チタンは軽くて丈夫」と言われる通り、比重は鉄の60%、強度などの機械的性質は他の材質よりも優れています。このことは、一方のコンセプトであるエコ・テクノロジーの環境建築に対しても貢献しています。
●周辺環境へ配慮したアルミナブラストと折板形状
チタン材の使用量が4200㎡にも及ぶ外装パネルの仕上げはアルミナブラスト。ブラスト仕上げとして使用されることの多いビーズブラストとは異なり、メタル的な光沢を抑えたグレーに近い仕上がりとなります。都心で光沢のあるものは避けたいという方針のもと採用されたアルミナブラスト仕上げは、大規模な外壁としては初めてのプロジェクトとなりました。
さらに、金属材の持つまぶしさを軽減し建物に柔らかさを与えるために、折板形状のパネルとしたことも、周辺環境への配慮が伺えます。
KIKUKAWAのテクノロジー – シルキーブラスト仕上げはこちら
●11箇所の曲げを施した長尺パネル
1.5㎜のチタンパネルで囲う外装は、基本的にW770㎜の山形パネルとW250㎜のスリットパネルの繰り返し。高さが6mにも及ぶ長尺パネルにも関わらず、山形パネルは11箇所曲げ加工を施しています。
その上、外観の一部が末広がりのフォルムであるため、120列のうち約1/4はパネルの上端と下端の幅が異なる形状。放射状に曲げを行う必要がありましたが、精度良く加工しました。
●積み重ねたチタンパネル製作のノウハウを駆使
本プロジェクトは、2FL以上の外装チタンパネル工事に2社で構成したカーテンウォール共同企業体として参画。面を工区に分けて半数ずつ担当するJVでしたが、KIKUKAWAがチタンパネルの製作全般を、現在は解散した会社がCW方式のフレームサッシの製作全般を受け持つ協力体制で対応しています。
それぞれが得意分野で力を発揮することで品質要求に適した良品を納め、特にKIKUKAWAは他社にはない積み重ねたチタンパネル製作のノウハウを駆使しました。その結果、縦横のラインが強調される特殊な造形にも関わらず、例えば下から見上げても、綺麗な線が空にのびた素晴らしい建物となっています。
品名・施工個所 | 材質 | 仕上げ・加工 |
---|---|---|
外装 パネルカーテンウォール |
チタン | アルミナブラスト |
建物名称 | 昭和館 |
---|---|
施主 | 厚生労働省社会・援護局 |
設計 | 株式会社 菊竹清訓建築設計事務所 |
施工 | 竹中・間・鉄建特定建設工事共同企業体 |
竣工 | 1998年 |
建設地 | 東京都千代田区 |