メイン棟(正面)とレイク棟(右側):下見板張り風のブロンズ外装パネル
昼と夕、季節の移ろいにも調和するブロンズ外装パネル
マウンテン棟:3色の硫化イブシ仕上げがランダムに配置されている
●木造別荘の下見板張りイメージをブロンズ硫化イブシで表現
栃木県日光市、中禅寺湖畔に2020年7月にオープンした高級リゾートホテル「ザ・リッツ・カールトン日光」。中禅寺湖や男体山の眺望を誇るレイク棟、メイン棟、マウンテン棟の3棟で構成されるホテルの約5500㎡のブロンズ外装工事にKIKUKAWAは携わりました。
本プロジェクトは、『奥日光の自然と調和する邸宅』『日本の歴史文化、伝統技巧に敬意を込め、繊細な自然の移ろいを慈しむ、またとないラグジュアリーリゾート』がコンセプト。ホテル外装は、かつてあった木造別荘の下見板張り*をイメージとしていますが、耐久性の観点と足尾銅山のある精銅所が近い立地であることから地域の象徴として銅板を採用。ランダムな硫化イブシを施すことで、その風合いを演出しています。
*下見板張り:建物の外壁に長い板材を横に用いて、板の下端がその下の板の上端に少し重なるように張ること。
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●ランダム配置の3色の硫化イブシ
コンセプトに合致した風合いを意匠に反映するとのご要望のもと、いろいろ条件を変え試作を繰り返し、何度もモックアップを製作。実物イメージでデザイナーに確認していただき、HLの上に濃・中・淡3色の硫化イブシを施した色味に決定しました。
その3色をランダムに配置する事で自然に溶け込む演出を求められ、敢えてその配置は図面に明示されませんでした。そのため、3色それぞれの製作枚数を決めるのも、どこに取り付けるかもKIKUKAWAの加減次第。正解がないなか、取付職人との相談で枚数を決め、製造の段階でランダムに梱包してもらい、現場では迷わないよう掴んだものから施工するようにしました。
その甲斐もあり、一見したところの壁面は、スギ下見板張り風に葺いたものに見える演出を実現することができました。
●下見板張り風のブロンズ外装パネル
ブロンズ外装パネルは、純銅版(C1100P)0.6㎜、見附基準H170㎜×W1800㎜のパネルを重ねることで構成。それぞれの鎧板は、下部方向に5度ほどの勾配がついています。重ねるにあたっての工夫点として、バーリング加工にてガイド的な爪をパネルに設け、精度を出すようにしました。また、縦目地は3㎜と極小に抑え、同材の目地板を裏にあてて一体感をもたせています。
施工面においては、強度を担保した上で寸法誤差を最大限に吸収できるように下地を前もって加工。ビスも特殊なものを採用し、効率化をはかりました。
●その他のブロンズ製品
外装パネルと取合う各所の軒天井パネルも下見板張り風で納めています。こちらは、勾配がなくフラットなので、スパンドレル形状に成型しました。
メイン棟のエントランスには、両袖付フラッシュ扉をブロンズ製で納品。ムラを敢えて出したHL+硫化イブシ仕上げを施しています。扉サイズW1400㎜×H3500㎜の表面は1枚板で構成。木引手の土台は6㎜の銅版を加工し、用途に合わせ着脱できるような仕様になっています。
●広大な敷地に大量のブロンズ外装パネル
3棟も横に連なる広大なホテル敷地に約5500㎡のブロンズ外装工事。施工管理と職人にとっては体力的にも大変で、ランダム取付のこともあり苦労の多かったプロジェクトとなりました。そのような中、パネル養生シートなしでもキズがつかない梱包方法を考案し効率化を図るとともに、梱包資材の削減と現場でのゴミ削減に貢献しています。
当初の意図した通りの外観意匠に、デザイナーから高評価を頂けた「ザ・リッツ・カールトン日光」。0.6㎜の薄板銅板を外装に大量に使用したプロジェクトとして、KIKUKAWAの重要な事例の1つとなりました。
品名・施工個所 | 材質 | 仕上げ・加工 |
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ブロンズ外装パネル | 銅(C1100P) | HL+硫化イブシ |
ブロンズ軒天井パネル | 銅(C1100P) | HL+硫化イブシ |
ブロンズ製建具 | 銅(C1100P) | HL+硫化イブシ |
建物名称 | ザ・リッツ・カールトン日光 |
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施主 | 東武鉄道 株式会社 |
設計 | 株式会社 日建設計 |
施工 | 東武建設 株式会社 |
竣工 | 2020年 |
建設地 | 栃木県日光市 |