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プロダクト施工事例

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公益財団法人石橋財団 アーティゾン美術館

大型金属オブジェ『FOAM』:泡をイメージした立体的な形状を溶接したSt丸棒で表現

特注でオーダーした真鍮材で製作した金属製品
上・中右:6㎜の目地でシャープな印象をあたえる3Fメインロビーの真鍮パネル
中左:下段に長さ6.8mの長尺パネルを配置した4Fインフォルームの吹抜け壁
下左:3Fレクチャールームの8連ガラスパーテーション枠と奥の真鍮パネル
下右:5Fエレベーターホールの真鍮鋳物の手摺笠木と真鍮パネル

濃色パターンのりん酸亜鉛処理を施したスチール製品
左上:3Fメインロビー独立壁(奥にみえるのは金属オブジェ『FOAM』)
上右:1Fエントランスロビーのデジタル看板のH型柱型(画像左)
下:1Fミュージアムカフェの本棚(画像右)

●素地を活かす真鍮製品やりん酸処理製品と創造を体感できるオブジェ

東京都中央区京橋、中央通りと八重洲通りが交わる地に新築された「ミュージアムタワー京橋」。その高層ビルの低層階(1F~6F)に開館した「公益財団法人石橋財団 アーティゾン美術館」の金属及び建具工事に、KIKUKAWAは参画しました。
旧ブリヂストン美術館のDNA を受け継いだ「アーティゾン美術館」のコンセプトは“創造の体感”。親しみやすく開かれた施設にて、見る・感じる・知ることで、作品の創造性を体感してもらうことを目指しています。
その親しみやすい印象をつくるため、現代的で人の持つ温かみを意識した素材を、本プロジェクトでは採用。KIKUKAWAが納めた金属製品のなか、素地を活かした特注の真鍮(黄銅)板や、りん酸亜鉛処理を施したスチール板も、そんな素材の1つでした。メインロビーの『FOAM』と呼ばれるオブジェに関しては、まさしく創造を体感できるものとなっています。

●先端3Dソフトと職人技の融合で実現した金属オブジェ

【FORM接写】

【FOAM接写】

泡をイメージした立体的な大型オブジェ『FOAM』は、その形状を2次元図面では表現できることが少ないため、ほとんどを3Dモデリングにて対応。自由曲面を含む3次元形状をアルゴリズムにより生成する3DソフトRhinocerous(ライノセラス)とそのプラグインソフトGrasshopper(グラスホッパー)を駆使し、打合せから作図、そして製作検討から実際の製作までフルに活用しました。また、形状を分析し検証するため、3Dプリンタで部分模型を作るなどもしています。
W5470㎜×H5390㎜、奥行き780㎜の『FOAM』は、φ8㎜のスチール丸棒を複雑な立体パターンで溶接し構成し、ウレタン樹脂塗装で仕上げています。6組のユニットに分割し製作し、最終的に現場溶接で一体化。そのため、丸棒の寸法や角度はシビアな精度を必要としましたが、工夫した架台やゲージを考案することで解決しています。

KIKUKAWAのテクノロジー – 設計技術力はこちら

●特注製作の真鍮材を大規模に採用

「アーティゾン美術館」はもちろんのこと「ミュージアムタワー京橋」共用部の真鍮製品は、ほぼ全てKIKUKAWAにて対応。その最大の理由は、市場に流通している真鍮材(Cu60Zn40)を使用するのではなく、合金比率の違う特注製作の真鍮材を採用したためです。素地の色味に対するデザイナーの強いこだわりにより、通常の真鍮材よりゴールド色の鮮やかな材料が選ばれ、温かみのある柔らかな金色の輝きを実現しています。
この特注製作の真鍮材をここまで大規模に採用したプロジェクト(調達量≒1720㎡・35.9ton)は過去にも例がなく、使用するにあたって様々な懸念がありました。しかし、材料メーカーと培った信頼関係により、安定した調達力と品質を確保。材料検査や表面研磨など各工程においてもひとつひとつ検査を実施し、品質管理を徹底しました。

●様々なディテール要望に応えた真鍮製品

ELVホールや展示ロビー、3Fのレクチャールームや4Fのインフォルームの壁面パネルは、無垢の輝きを活かしたPHL(バイブレーション)研磨を施した、3㎜の真鍮カットパネルを採用。おおよそ1m×3mのパネルが多いなか、最大長さ6.8mのパネルも納めています。
下地構成を工夫することで、目地6㎜や貼り代40㎜と厳しい条件をクリア。最小限となったパネルフレームのため、移動や取付中にパネル折れの心配もありましたが、治具などを工夫して解決しました。その治具は、建て込みスピード上昇や取付平滑精度向上などのメリットももたらしています。
同じく特注真鍮製であるレクチャールームのガラスパーテーション枠は、W10.9m×H3.2mの開口を8枚の扉で構成。接続する前室に全ての扉を収納できる仕様となっており、状況に応じた空間活用ができるようになっています。
そのほか、特注真鍮材の色味に合わせた鋳物製の吹抜けガラス手摺の笠木や建具工事など、真鍮製品は多岐にわたりました。それぞれの項目に対して先行試作して検証するなど、それらの様々なディテール要望に応えています。

●美術館に調和するりん酸亜鉛処理を施したスチール製品

瓦や硯のような色と質感により上質感を演出する<溶融亜鉛めっき+りん酸亜鉛処理>を施したスチールパネル。採用された濃色のりん酸パターンは、随所でアクセントとして風合に溶け込んでいます。基本ディテールは真鍮パネルと同様に、目地6㎜及び貼り代40㎜の3.2㎜カットパネル。家具などの造作物を含めたほぼ全てのりん酸パネルをKIKUKAWAが担当しました。

【粉体塗装で仕上げたスチール製壁付手摺】

【粉体塗装で仕上げたスチール製壁付手摺】

3Fメインロビー、65㎡のESCの側パネルとその裏の独立壁は、りん酸パネルの濃色と『FOAM』の白色とのコントラストにより存在感を発揮。W900㎜×H3000㎜の基準パネルと、斜線に合わせ形状がそれぞれ違う三角形と台形パネルで構成されています。
1Fミュージアムカフェ、W11.7m×H2.7mの本棚もりん酸パネル製です。化粧面がスッキリ納まるように下地構成を工夫。縦に通した奥行き420㎜の10列の仕切り板の間に、5段の棚板を3㎜目地で組み合わせています。
上記とは異なり、1Fエントランスロビー階段のスチール製の壁付手摺は、ダーク系の粉体塗装でコーティング。半円に曲げ加工した内側には、照明BOXを内蔵しています。

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●メタルワークの総合力にて貢献

アーティゾン展示品

【展示材料(真鍮・りん酸材)】

現場施工においては、シビアな工程や現場ならではの計画変更にも、臨機応変に対応しました。内装ゼネコンをはじめ鉄骨弋工や楊重センターなど多数の方々との協力関係を築けた結果でもあります。
このように、3D-CAD技術、材料調達力、品質管理、要望実現力、施工管理能力などのメタルワークの総合力にて「アーティゾン美術館」に貢献。開館時には建物に使われている材料展示が6階ギャラリー小展示室で開催され、KIKUKAWAの社名記載の真鍮材とりん酸処理材が披露されています。

品名・施工個所 材質 仕上げ・加工
3Fメインロビー
金属オブジェ『FOAM』
スチール ウレタン樹脂塗装
3D-CAD
ELVホール・展示ロビー他
壁パネル・サッシ枠
特注真鍮 PHL
特殊建具
3Fメインロビー他
壁パネル・造作物
スチール りん酸亜鉛処理
建物名称公益財団法人石橋財団 アーティゾン美術館
施主公益財団法人 石橋財団
設計設計・監理:株式会社 日建設計
美術館内装デザイン:TONERICO: INC.
施工戸田建設 株式会社
美術館内装施工:株式会社 綜合デザイン
竣工2019年
建設地東京都中央区(ミュージアムタワー京橋内)