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KIKUKAWAのテクノロジー

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りん酸亜鉛処理

りん酸亜鉛処理の後クリアー塗装を施した壁パネル

溶融亜鉛めっきを行ったスチール製品の「美観」をさらに高めるために注目され、見直されているのが「りん酸亜鉛処理」です。重厚感や高級感、自然な質感を求められるところに適した仕上げです。また、経年変化により徐々に濃淡が落ち着き、周辺景観と調和していくのも特徴の一つです。

主な特長・塗装では出せない独特で落ち着きのある味わいを表現
・経年変化により周辺景観と調和していく
・溶融亜鉛めっきをした上での処理のため防錆効果が高く外部でも使用可
対応可能素材鉄(スチール)に溶融亜鉛めっきした素材・製品
種類淡色・中間色・濃色
2次仕上げにクリアー塗装可
対応サイズW1100×L4500
※上記を超える寸法は要相談
備考材料成分の違いや板厚により濃淡や模様は結果として表れる処理です。
ご採用の際には事前にご相談願います。
りん酸亜鉛処理のみの加工受託対応は承っておりませんので、ご注意願います。

りん酸処理にて日本瓦をイメージした外装パネル

りん酸亜鉛処理を施す目的

1.周辺景観への調和・協調性

鉄(スチール)は金属材料の中でいちばん安価な材料ですが、生地のままだとサビなどの耐食性の問題から、めっき処理や塗装を施す必要があります。その中でも溶融亜鉛めっきは、耐食性に優れ、比較的コストが低く、メンテナンスフリーであることから、外部の鉄鋼製品によく使用されています。しかし、処理直後の溶融亜鉛めっき製品は酸化が進んでいないギラギラした光沢があるため、落ち着きのない安っぽい印象が周囲の景観と協調しない傾向があります。そこで淡灰色から濃灰色までの「りん酸亜鉛処理」を施すことで、周囲の景観と調和させ落ち着かせる効果があります。

このような効果のある「りん酸亜鉛処理」を施すことで表出される模様や不均一な濃淡は、人工的ではなく自然な仕上がりとなり、重厚感・高級感を醸し出します。又、経年変化により徐々に濃淡が落ち着き、周辺景観とより調和したものになっていく特徴もあります。これらの特徴が「美観」を高めるための仕上げとして見直され、スチールの金属仕上げとして需要を高めています。

2.塗装の密着性向上

鉄鋼製品や亜鉛めっき製品などは、塗料との密着性が悪いため塗装後の剥離が起きやすくなりますが、「りん酸亜鉛処理」を施すことで、密着性を高めることができます。りん酸亜鉛化成被膜は、緻密かつ均一、そして多孔性であり適度に薄いことから、塗装下地処理として要求される諸条件を備えています。これらの性能は、塗料メーカーが販売しているプライマーより密着性が遥かに上回り、特に高級焼付塗装において力を発揮します。

3.接合部分の耐摩擦性・耐摩耗性向上

りん酸亜鉛化成被膜は、りん酸の緻密な結晶粒子が複雑に絡み合って生成されているため、極めて優れた摩擦係数・すべり耐力を有しています。この特性は、鉄骨製品の接合部などに優れた効果を発揮します。

りん酸亜鉛化成被膜とは

溶融亜鉛めっきされた鉄製品の表面に化学反応によって無機質の結晶性皮膜(1~20μ)を析出(*1)・形成させる処理です。析出・形成される皮膜はホパイト(Hopeite) やフォスフォフィライト(Phosphophyllite)(*2)等を主成分とする難溶性のリン酸亜鉛化合物であり、下記のような段階を経て生成されます。生成された皮膜は多孔性であり、溶融亜鉛めっき層と一体となります。

1:溶融亜鉛めっき品と処理液が反応。エッチングと同時に水素ガスを発生させながら、りん酸の成分により素材の亜鉛が溶出。

2:浴中の金属塩により、溶出した亜鉛が難溶性のりん酸亜鉛化合物に変化。

3:難溶性のりん酸亜鉛化合物が皮膜となり、素地上に析出・形成する。

(*1)析出(せきしゅつ)=液体の中から固体が分かれて生成してくること。析出は主に温度変化や溶媒の量・混合比の変化によって、その化合物の溶解度が下がることによって起こる。

(*2)ホパイトやフォスフォフィライト=リン酸亜鉛処理を行った時に得られる結晶性のリン酸塩皮膜の主成分。ホパイトはZn3(PO4)2・4H2O、フォスフォフィライトはZn2Fe(PO4)2・4H2Oの化学式であらわされる。両者とも鉱物名であり、同じ結晶構造を持つものが天然に産出される。結晶構造の良く似たこれらの成分がサビの進行を防止し、塗膜の密着性を高める。

りん酸亜鉛化成被膜の特性

 1.りん酸亜鉛化成被膜の耐食性

基本的には溶融亜鉛めっきの付着量などに担保されますが、初期の耐食性は溶融亜鉛めっきの2倍あり、非常に優れています。金属腐食が進行する原因は電位差による電池作用によるものですが、りん酸亜鉛化成被膜は無機質の不導体であるため電流を通しません。それに加えて、塗装と異なり化学的に生成された、りん酸亜鉛化成被膜は剥離することがないことも、耐食性を高める要素となっています。これらのことが、最初の数年間ほどは溶融亜鉛めっきの腐食減量を防ぐ効果をもたらしてもいます。

2.りん酸亜鉛化成被膜の耐候性

りん酸亜鉛化成被膜自体は無色で光の反射により色調の表情が出る仕組みであり、紫外線による影響もあまり受けないことから、耐候性の概念にはあてはまりません。

しかし溶融亜鉛めっき製品が酸化被膜を生成するのと同様に、大気中の二酸化炭素や水分が多孔性のりん酸亜鉛化成被膜に入り込むことで、りん酸亜鉛処理製品も保護性の塩基性炭酸亜鉛被膜を生成します。経年変化による皮膜の生成が色味の移行に表れ、数年をかけて除々に渋さが加わり、景観になじみやすいグレー色へ落ち着いていきます。

りん酸亜鉛処理の種類

KIKUKAWAのりん酸亜鉛処理であるフォジンク(PHOZINC)は、淡色・中間色・濃色と3種類のラインアップを用意しています。また、2次仕上げとしてクリアー塗装を施すことも可能です。経年変化を抑制するためや、色味の変化をつけるためにカラークリアーを施すなど、用途やデザインによって選択できます。また、外部では使用できませんが、クリアー塗装後に研ぎ出し加工をすることで、ミガキ石のような重厚感と高級感を表現することもできます。

-フォジンク:溶融亜鉛メッキ+りん酸亜鉛処理のラインアップはこちら-
KIKUKAWAの金属仕上ラインアップ-スチール

りん酸亜鉛処理の工程と可能寸法

りん酸亜鉛処理の大まかな工程は次のようになります。

①溶融亜鉛めっき製品 → ②段取り・組替え → ③脱脂 → ④りん酸化成処理 → ⑤湯洗 → ⑥乾燥 → ⑦検査

溶融亜鉛めっきを含め工程のほとんどは、各液体層の中に浸漬させることで進みます。つまり、可能製品寸法は層の大きさに制限されます。りん酸化成処理層は、高さ1600㎜×幅1100㎜×長さ7000㎜ですが、KIKUKAWAでは品質も考慮に入れ、W1100×L4500以下を対応サイズとしています。このサイズを超える製品を検討する際には、一度ご相談をお願いします。

りん酸亜鉛処理採用の際の留意点

りん酸亜鉛処理は、微細な材料成分の違いや板厚・形状、溶融亜鉛めっきの品質により濃淡や模様は結果として表れます。つまり、濃淡や模様をコントロールするのは非常に困難であり、均一の色合いや模様には仕上げることはできません。また、溶融亜鉛めっき自体は化粧仕上げのためという考えがないので、湯流れによるムラ、めっき溜まり、やけなどが生じることによる化粧面への影響を避けることはできません。あくまでも、りん酸亜鉛処理は人工的ではなく自然な仕上がりが魅力であり、経年変化により風合いが増す特性であることを採用する際は留意してください。また、このような特性から補修塗装も基本的には不可能な処理となっています。

■KIKUKAWAりん酸亜鉛処理:フォジンク

フォジンク(PHOZINC)は、りん酸亜鉛処理を化粧仕上げとして高めたものです。数々のりん酸亜鉛処理のプロジェクトに参画する中で、経験とノウハウを蓄積しています。濃淡や模様のコントロールが難しい中でも、材料のロット管理を行い、製品の溶融亜鉛めっき層やりん酸化成層への浸漬をノウハウに基づき適切に行うなどの品質管理をしています。そのことにより、「りん酸亜鉛処理」の自然な仕上がりと、一定の統一感を両立させています。また、溶融亜鉛めっき製品は特に薄板製品において、熱による変形が生じる恐れがありますが、設計段階から検討することで品質を保っています。

-施工事例はこちら-
プロダクト施工事例 – 金属表面仕上で探す:りん酸亜鉛処理
メタルワークNEWS – 伝統とモダンを表現するりん酸仕上げのルーバーファサード
メタルワークNEWS – りん酸亜鉛処理の金属製造作物

りん酸亜鉛処理製品は、板厚・形状などの諸条件がありますが、KIKUKAWAは顧客のご要望に対して真摯に取り組んでまいります。ご検討・ご採用の際には、ぜひご相談ください。


りん酸処理にて日本瓦をイメージした外装パネル


濃中淡3色のグラデーションルーバー


りん酸処理仕上の外構手摺


りん酸処理+研ぎ出しクリアーのインテリア

「りん酸亜鉛処理」が使用されている施工事例