復元した低層部と調和した「りん酸亜鉛処理」を施したスチールパネル及びルーバー
りん酸亜鉛処理を施したスチール有孔折板ルーバー(竣工前)
中庭からみたエントランスの様子:スチール柱型パネル・壁パネル・幕板パネルはりん酸亜鉛処理を施している
●「溶融亜鉛めっき+りん酸亜鉛処理」にて伝統と未来を両立
「東京大学」本郷キャンパス内、内田ゴシック*の旧校舎を復元・再生した「工学部3号館」の金属工事に、KIKUKAWAは参画しています。
設計コンセプトは、歴史的景観を継承しつつ、21世紀の教育・研究機関にふさわしい世界を担う地の拠点づくり。伝統と未来の両立のため、低層部は外壁保存を含め旧館を復元、高層部は先進的な技術を活用しボリューム感を低減することで、景観に配慮したデザインとなっています。
KIKUKAWAが担当した高層部のスチール製ルーバーやパネルは、自然な風合により周辺景観と調和する特色のある「溶融亜鉛めっき+りん酸亜鉛処理」を施すことで、そのコンセプトに貢献しました。
*内田ゴシック:日本の建築学者・建築家である元東京帝国大学総長の内田祥三(よしかず)氏によるカレッジ・ゴシック様式を基調とするデザインパターン。関東大震災後の復旧の際、正門から続く銀杏並木などキャンパスに明快な軸線を導入した。安田講堂は氏の代表作。
●「溶融亜鉛めっき+りん酸亜鉛処理」の品質管理
「東京大学工学部3号館」のりん酸パネルは、中間色を採用しています。同じ中間色でも、溶融亜鉛めっき液やりん酸液の温度や時間別に数種類の実物大サンプルを製作し、お客様がその中から選択。できるだけ均一の色合いや模様が求められる中、本来コントロールが非常に困難な仕上げにも関わらず、決定したサンプルの管理条件を徹底することで、ムラを最小限に抑えました。
また、製品の溶融亜鉛メッキ層への出し入れによる湯流れ方向も管理項目に入れるなど、きめ細かい品質管理を実行しています。
KIKUKAWAのテクノロジー – りん酸亜鉛処理のページはこちら
●りん酸亜鉛処理を施した外壁及び笠木パネル
5FLを囲う「溶融亜鉛めっき+りん酸亜鉛処理」を施した585㎡ある外壁パネルは、幅の狭い短冊タイプ。基準部W478㎜×H3825㎜、窓部W423㎜×H1765㎜のパネルは、スチール1.6㎜を曲げ加工しています。
外壁パネルの上部を周回する230mの笠木パネルも外壁と同様の仕様です。D410㎜×H60㎜の先端上部は、シャープな25㎜のラインを通すために深曲げ加工で製作。事前に深曲げ加工部の溶融亜鉛めっきの影響を確認するなど品質の確保に努めています。
KIKUKAWAのテクノロジー – 板金曲げ技術のページはこちら
参考パンフレット:深曲げ加工によるデザインパンチングルーバーのPDFデータはこちら
●りん酸亜鉛処理を施した有孔折板ルーバー
6~9FとRFLを囲う2700㎡の有孔折板ルーバーも、「溶融亜鉛めっき+りん酸亜鉛処理」を施したスチール1.6㎜の加工製品。10㎜×60㎜の長方孔を千鳥にパンチング加工した鉄板を、底辺200㎜×高さ120㎜の山型に曲げ加工しています。
基準Hが3m前後のルーバー9本を工場にて組み合わせ、ユニット化したルーバーパネルを施工。内外から見えるユニット下地や取付下地も、りん酸亜鉛処理を施しています。
また、高層部のルーバーということで、事前に風洞実験による風切音を確認し、許容範囲であることを確認しました。
●りん酸亜鉛処理を施した柱型パネル
2箇所あるエントランスホールとそれに伴う中庭を含めた出入口周りも「溶融亜鉛めっき+りん酸亜鉛処理」を施した1.6㎜のスチール製品を納めています。2Fまで吹き抜けたホールの壁パネルや柱型パネルは700㎡を超え、様々な取合がある中、幅500㎜~750㎜の細長タイプのパネルを細かく割付。柱型パネルの正面は、基準幅1240㎜の凹型形状で、りん酸亜鉛処理の風合とともに落ち着いた重厚感を醸し出しています。
また、出入口周り庇上部の幕板パネルは、底辺25㎜×高さ40㎜の三角材の羽を横流しに重ねることで、アクセントを出しています。
品名・施工個所 | 材質 | 仕上げ・加工 |
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5FL 外壁及び笠木パネル |
スチール | りん酸亜鉛処理 深曲げ加工 |
高層部 有孔折板ルーバー |
スチール | りん酸亜鉛処理 長方孔パンチング |
エントランスホール 柱型・壁・幕板パネル |
スチール | りん酸亜鉛処理 |
建物名称 | 東京大学工学部3号館 |
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施主 | 国立大学法人 東京大学 |
設計 | 基本設計:東京大学キャンパス計画室・東京大学施設部 実施設計:株式会社 類設計室 |
施工 | 株式会社 安藤・間 |
竣工 | 2013年 |
建設地 | 東京都文京区 |